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平成8年度研究計画と予算の概要


科学技術の進展は世界全体の発展の原動力であり、科学技術の創造は基礎研究により推進される。即ち基礎研究は世界の発展の文字どおり基礎をなすものであり、世界の共通財産として利用されるべきものである。しかし市場の力では、直ちには利益を生まず、リスクが大きい基礎研究への投資は過小となることから、政府の積極的な支援が必要である。特に我が国はその経済力と科学技術力に照らし積極的に取り組む必要がある。
融合研は、学際性に富んだ、先導的基礎研究を目指している。このため、国際交流、産学官の積極的な共同研究を進めている。
研究テーマは、引き続きアトムテクノロジー、クラスターサイエンス、バイオニックデザインが実施されるとともに、平成8年度では、新しく「次世代光基盤研究」が特別研究としてスタートすることになった。ここにおいても、産学官の研究者が集まって来ることになっている。また、「次世代光基盤共同研究センター」と命名される実験棟の建設も予定されている。
フィージビリティー研究においては5テーマ中3テーマが終了し、脳科学、ヒューマン情報科学の2テーマとなったが、平成8年度には1テーマを加え、3テーマを実施する。
融合研のイベントとしては、第4回評議員会の開催、国際ワークショップ、シンポジウムの開催、共催を行う。


[指定研究]
原子・分子観察操作技術の研究開発(産業科学技術研究開発)

〔研究の目標〕
エレクトロニクス、新素材、化学、バイオテクノロジー等の各産業技術分野における共通基盤技術として、表面上及び空間内において原子・分子1個1個を精密に観察・操作する技術を確立するためその要素技術及び支援技術の研究開発を行うことを目標とする。
〔全体計画〕
原子・分子レベルでの物質の観察・操作の実現のため、その基礎となる表面・界面反応、及び原子・分子に関わる諸現象を理論的に解明する。また、原子・分子レベルの観察・操作に不可欠な、動的高速観察技術等の支援技術の開発を行う。さらに、所定の原子構造を持つ原子集団の固体表面上での配列や反応を制御し、所望のナノメータ構造を自己組織的に作製するための基礎技術の確立を目指す。


[特別研究]
クラスターサイエンスに関する研究(国際基礎研究)

炭素クラスターからC60が単離され、一連の安定炭素クラスターが新しい化学を誕生させている。しかし、一般的にクラスターは単離できない短寿命の原子・分子集合体である(ダイナミッククラスター)このダイナミッククラスターの特性を解明するため、及びこのクラスターの安定化による利用を図る研究を行う。
平成8年度では

1 ダイナミッククラスター特性の実験的解明
赤外分光法、及びより長波長のサブミリ波を用い、金属クラスター、分子クラスターなどの特性解明を図る。特に、金属クラスターに有機、無機分子を吸着させその反応性を調べつつ、クラスターの構造などを調べる。また、新たな手法を導入し、クラスターの反応、クラスターサイズによる差異を調べる。
一方、溶液クラスター特性観測装置の改良を行ない、種々の条件下での溶液中のクラスター特性を調べ、気相中のクラスターとの差異ならびにその理由を解明する。

2 ダイナミッククラスター特性の理論的解明
水素結合クラスターを対象とし、第一原理に基づくクラスターの安定性、クラスターの形成過程を調べ、溶液実験結果との対応を図り、理論の有効性を検証しつつ、種々の現象に適用する。

3 クラスターの安定化ならび安定化クラスターの特性
構成粒子数が均一なクラスターを表面に安定化させその構造を調べると共に、粒子数の違いによる構造変化の原因を探り、クラスターが原子・分子とバルクの間に位置しそれぞれと異なる理由を探る。
また、種々のゼオライト中へ安定化されたクラスターを作製し、その特性を調べると共に、その原因を探り、新たな特性を予想する体系確立を図る。


バイオニックデザインに関する研究(国際基礎研究)

1.バイオクリスタルに関する研究

骨細胞、血管内皮細胞を対象に解明的研究を行う。即ち、骨芽細胞、破骨細胞の培養系を確立し、骨形成にかかわる蛋白質等を分離精製する技術を確立し、機械的刺激又は電気的刺激を与えたときの機能的適応機能、自己修復機能についての研究を実施する。また、電子顕微鏡、レーザースキャニングコンフォーカル顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて超微細に骨ミネラリゼーションを観察する。これらによりバイオクリスタリゼーションの解明に取り組む。さらに、生体物質と無機・有機物質とのインターフェースの解析を通じてその相互作用の解明に取り組む。
一方、解明的研究と並行して創製的研究としてインテリジェントバイオマテリアルの創製にも取り組む。 平成8年度では、骨芽細胞のライン化細胞について骨化過程を観察し、物理的刺激化に於る骨ミネラリゼーションのメカニズムを超微細に探ると共に、骨ミネラリゼーションにかかわる蛋白質等の機能を明らかにする。破骨細胞に生化学的刺激を与えることにより骨細胞活性化メカニズムを検討する。また、多孔質材料への皮膚細胞増殖の解明を始める。

2.分子機械に関する研究

生物運動の分子レベルでの動力源である蛋白分子集合体における分子間、分子内駆動に寄与する基本的分子間相互作用の効果の解明を図る。このため、滑り相互作用に及ぼす水構造の影響を調べると共に、分子近傍場の解析、疎水性官能基を有する表面に働く力の性質の解析、蛋白質の人為的改変による運動機能の解析などを行う。また、生体分子の認識・結合機能等を用いた分子部品の構築、計測、制御、組立技術の開発を目指す。
平成8年度では、アクトミオシン系の滑り相互作用に及ぼす水構造の影響を調べるため、変異体分子近傍場の力の解析に着手すると共に、コンピュータによるシミュレーションにより、膜蛋白質を例に構造形成のエネルギー計算を行い、アミノ酸の1次構造との相関を調べ、分子レベルでの認識・結合機能の解明に取り組む。さらに超分子構築方法を検討する。


次世代光基盤研究(戦略研究)

現在の技術による記憶容量の限界をはるかに上回る、テラバイト(1兆バイト)級の光ストレージ及び高速アクセスの可能性を追及し、その実現のための基盤研究を行う。 現在の光ディスク等の1000倍程度の記憶容量を持つ光記録素子を作成する技術が確立すれば、マルチメディア時代に対応した、高度情報社会の実現が可能となる。 上記の目的を達成するため、次世代光基盤研究では近接場感応原理の応用、より短波長のレーザーの開発、新しいメモリーアクセス技術の開発等を中心にした研究を行う。


[経常研究]
・原子集団の自己組織化に関する基礎研究
・クラスターの形成過程に関する基礎研究
・生体模倣材料要素の開発に関する基礎的研究
・次世代大容量光メモリーに関する基礎的研究


〔当所の予算〕
(単位:百万円)
平成7年度 平成8年度(政府案)
本予算 研究費 アトムテクノロジー2,176(230)2,399(267)
クラスターサイエンス224(195)205(195)
バイオニックデザイン224(195)205(195)
次世代光基盤研究080
フィージビリティスタディ5050
経常研究費6969
合計2,743(739)3,008(856)
国際交流費6565
人件費430430
研究所運営費192192
合計3,430(1,4263,695(1,543)
第一次補正予算 研究費 アトムテクノロジー370(290)・・
クラスターサイエンス60(60)・・
バイオニックデザイン60(60)・・
合計490(410)・・
国際交流費16・・
施設整備費650・・
合計1,156(1,076)・・
第2次補正予算 研究費アトムテクノロジー37(0)・・
次世代光基盤研究用実験棟1,830(注)8年度へ繰越予定・・
合計1,867(1,830)・・
総合計6,453(4,332)・・
(注)アトムテクノロジー、クラスターサイエンス、バイオニックデザイン及び合計の欄において括弧内は融合研分の予算で内数。



〔当所の構成人員〕              
平成8年4月1日現在
   人数アトムテクノロジークラスターサイエンスバイオニックデザイン次世代光基盤
所長1名    
研究者 研究職職員39名(1名)19名(1名)10名9名1名
工業技術院の他の研究所からの併任15名6名7名2名 
科学技術庁の研究所からの併任1名1名   
大学の教授、助教授等の併任等8名(1名)6名(1名) 2名 
企業の研究者45名(4名)40名(3名)1名4名(1名) 
各種フェロー制度等(ポスドク44名(26名)23名(10名)6名(5名)14名(10名)1名(1名)
大学院生15名(2名)4名(1名)2名9名(1名) 
合計167名(34名)99名(16名)26名(5名)40名(12名)2名(1名)
事務職員 行政職職員11名
筑波研究支援総合事務所または工業技術院の他の研究所からの併任4名
技術研究組合オングストロームテクノロジ研究機構の事務職員31名
合計46名
総合計214名
(注)括弧内は外国人の人数で内数。