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産業技術融合領域研究所の創設にあたって(ご挨拶)

産業技術融合領域研究所長
大越 孝敬
この度、産業技術融合領域研究所長を命じられた大越です。昨年末までは、東大先端科学技術研究センターと、工学部電子工学科の教授を勤めてまいりました。
さて、1993年1月1日をもって融合研は発足し、我々はひとつの仲間となった訳です。まず、このことを皆様と共に喜びたいと思います。同時に、これまで高邁な理念と周到な計画に基づいて融合研の実現に尽力してこられた工業技術院、通商産業省他の関係各位に厚く御礼を申し上げ、敬意を表したいと思います。
融合研の目的は、「基礎的かつ先端的な研究分野における学術的な研究テーマを、産学官が一体となり、かつ国際的な協調のもとに追及することにある」とされております。
以前に私がその創設に参加いたしました東大の先端研も、やや似た理念に基づいて創られた研究所でした。とは申しても、この二つの研究所はかなり異なっております。両者の対比を少し交えながら、融合研発足に当たっての私の抱負、考え方といったものをお話ししてみたいと思います。
第一に融合研の目的は、誠に高邁なものでありますが、それだけにその目的の達成は決して容易なものではない、と言うことです。現在は、産・学・官のうち、官側の第一段階が一応作られたところです。産学官の協力体制、国際的協調体制など多くの課題の解決が、今後の我々の努力にかかっています。
我々は、高い理想を持つと同時に、当面はそれに向かって一歩一歩着実に、細心の注意を払って日々の仕事を進めることが要求されます。そして研究面では一つでも二つでも、三つ四つならなお良いと思いますが、国際的に高い評価を受けられるような優れた研究業績をまず積み上げることが、何より大切だと思います。
それによって、この新しい融合研が、外部の高い評価と尊敬をかちとり、それが産、学並びに外国の優れた研究者の参加を促し、それがまた高い研究成果をもたらす、という良いサイクルに早く入れるようにしたいと思います。
第二は、融合研の所員としての誇りと、その裏をなす驕りの問題です。融合研は、発足の以前から日本のCOE(センターオブエクセレンス)として期待されておりました。これは、先端研の発足時とはやや異なる出発だと思いました.先端研の場合は、「海のものとも山のものともつかないもの」と考えた人も数多くおられまして、もう少し評価の定まらない出発でした。
これに比べますと、融合研はかなり「高い位置」からの出発だという気がします。これは誠に幸いであると同時に、ある意味で極めて困難な出発であるという気がしています。つまり我々は、当初から外部の高い期待に応えていかねばならぬ宿命を負っています。同時に我々自身の油断とも闘わねばなりません。非常な努力と謙虚な姿勢が、同時に要求されると思うのです。
第三に、なるべく早く我々融合研の固有のカルチャーを作り上げたいと思います。融合研独自の雰囲気、共通の価値観というものを作りたいと思います。当面、そのカルチャーを完成させる持続的な第一歩、その基盤を作ることが肝要であると思います。
私の当面の課題としては、所員一同の誰もが何についても自由に発言し、自由に討議する自在で闊達な雰囲気」を作りあげたいと思います。
それによって、全所員の英知を結集したい。
もとより私は非力なものでありますが、初代所長の重責を全うできますよう努力する所存ですので、皆様のご助力、ご協力をお願いいたします。
所長略歴
大越孝敬(おおこしたかのり)
昭和30年3月東京大学工学部電気工学科卒
35年3月東京大学大学院数物系研究科
電気工学専門課程博士課程修了
35年4月東京大学講師(工学部)
36年4月東京大学助教授(工学部)
52年1月東京大学教授(工学部)
62年5月東京大学先端科学技術研究センター
・初代センター長(工学部教授併任)
平成5年1月現職
