National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) This page is a page of the former research institute. We stopped updating on March 31.2001.
E-mail to webmaster (Japanese) E-mail to webmaster (English)







情報密度と生産技術−生物と工学の比較

本研究は、使用可能なエネルギーによる持続型社会への転換として生物の設計原理に着目し、バイオテクノロジーの寄与すべき工学的手法を模索するものである。今回具体的には免疫系の抗体反応において、生物デザインの設計情報データベースとして存在するDNAが構造形成に変換される際の情報量と会合エネルギーを算出し、工業的生産方法と相関関係を比較した。
分子同士の認識・結合による高度な組織化は、半導体のモデリングよりもはるかに上回るエネルギー効率であり、熱力学的側面から見たエントロピー効率は向上する結果となった。生物の場合、ゲノムサイズはあくまで前成的なデータベースであり、細胞という場や環境因子によって「設計」に必要な情報だけが後成的に読み出され、実行される。そのため、生物の情報密度に関して、DNA含量の比較から、種によって質的に違った存在でありながら細胞あたりのDNA量は同じスケールにあることが示された。人の脳の高次な可塑性がDNAによる規定ではなく神経細胞の回路の組み合わせによって生み出されるように、抗体の多様性は比較的少数の遺伝子コードの組み替えや変異による膨大な組み合わせから生じる。個体発生の形態形成において、前成的に存在する情報密度の高いデータベースすなわちDNAから、必要な情報を読み出してエネルギーとマテリアルを利用するという生体システムの存在が、現工学的手法よりも熱力学的エントロピーを抑止していると考えられる。
次世代型技術にはエネルギーコストを考慮したマルチメディア方面への対応が求められる。AIのフレーム問題や逆運動学、立体視のメカニズムの解は、現段階のコンピュータ演算能力では解が複雑すぎてシミュレーションが困難である。また半導体分野では量子力学体系のスケールに起こる超常磁性効果から、情報書き込み密度、リソグラフィー技術の限界が指摘されている。日本のバイオ産業市場は1兆800億円であり、その成長には、医療産業・農業・食品工学・バイオレメディエーション等の環境問題が大きく関与しているが、冗長性を含めた情報量の認識と場のエネルギー効率の補足・向上という側面からバイオ分野の市場がインフラ産業分野へ切り口を開けるか、これからの課題である。

fig. 生物と機械の情報量密度比較