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フィージビリティスタディ

破壊プロセスにおける原子分子素過程と破壊前駆現象に関する研究

えのもとゆうじ

榎本 祐嗣


■目的

本フィージビリテースタディーは、固体の破壊の前駆過程で生じる物理化学現象の発生原因を微視的あるいは巨視的に捉えられる有効な計測・統計解析手法を検討する。延いては地震前兆の諸現象などのマクロ現象との係わりも調べた。この研究は、学際的領域なので工業技術院の3所(機械技術研究所、地質調査所、中国工業技術研究所)から5つのグループが参画した。

■成果

1)破壊過程の分子動力学モデリング(機械技術研究所 手塚、平野グループ)

分子動力学法により古典的原子から構成される2次元の結晶系の単位時間当たりの破壊確率を、活性化エネルギー、速度定数、温度及び原子数の関数として定式化した。この方法による計算結果から、固体破壊の活性化エネルギーと速度定数の推定できた。

2)横振動モード原子間力顕微鏡による機械的性質の評価(機械技術研究所 山中、佐藤グループ)

当所で開発した横振動モード原子間力顕微鏡(LM-AFM)を用いて、水中でのラングミュアーブロジェクト(LB)膜の機械的性質を調べた。摩擦力は垂直荷重を増やすと14nN程度で急に増加し、荷重を減らすとほぼ可逆的に減少する。このことは、探針がLB膜を破壊・貫通して摩擦力の大きい下地に接触しても、荷重を除くと膜が回復したことを示す。

3)フラクトエミッション計測(中国工業技術研究所 川口、高坪、山本グループ)

石英ガラスの破壊時における破断表面での発光に関する励起と緩和過程について調べた。発光のスペクトルから、酸素欠乏欠陥、酸素正孔欠陥がSi−O結合の切断によって多数生成、励起され、緩和発光を生じることがわかった(図1)。また、ガラスのOH含有量の影響よって、石英ガラスの脆性がフラクトルミネッセンスに反映されることも判明した。

4)破壊前兆の電磁気現象の計測(榎本、加納グループ)

花崗岩を一定の昇温速度で加熱すると、250〜350℃の温度になるとで熱刺激エキソ電子が放射され始める。この岩石を一定の圧力を加えたまま加熱すると、放射臨界温度がより低い方にシフトする現象を見いだした(図2)。

5)地震前兆の諸現象の統計解析(地質調査所 西澤、松本グループ)

気圧、地球潮汐および降雨の影響を考慮した地下水位変化時系列データ解析プログラムを、静岡県草薙と榛原における水位観測データに適用した。そして三陸はるか沖地震(1994年12月)、兵庫県南部地震(1995年1月)、駿河湾内地震(1995年4月)について草薙観測井で顕著な変化を見いだした。

図1 石英ガラスの破壊に伴う発光の時間分解スペクトル(川口)


図2 圧縮応力を加えた場合と加えない場合の花崗岩の熱刺激電流信号(榎本、加納)