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フィージビリティスタディ
ヒューマンコミュニケーション支援

にきかずひさ
仁木 和久
■目的
このグループの目的は、ヒューマンコミュニケーション支援技術を根本的な理念から見直し、認知科学的な基盤の上に再構築する事である。すなわち、「コンピュータとネットワークを利用した遠隔地点間ヒューマンコミュニケーションの支援技術の確立を目標・目的として、ヒューマン=ヒューマン・コミュニケーションの質的要素の解明およびその定量的評価を行ない、さらに、人間のコミュニケーション特性を反映したヒューマンコミュニケーション支援システムおよびその利用技術の研究開発を行う」ことを目標にした。
当研究グループでは、このような研究を展開するに当たり、実践的な方法論と、多くの研究者の協力を可能にする「研究の輪」を形成しながらの展開が重要であると考えている。すなわち、ヒューマンコミュニケーションのの研究を推進するにあたり、研究の推進を行うコミュニケーションのチャンネルを実際に研究グループ内で実験的に構築しながら、システムを実際に利用しフィードバックを得ながら研究を推進した。特に今回のテーマでは、NTTのマルチメディア共同実験に参加し、実験的に開設されたATM回線を利用した先進的なヒューマンコミュニケーション支援システムの構築を推進した。慶応大学、新潟情報国際大学等との研究のコミュニケーションの輪を広げている。
■成果
(1)ヒューマンコミュニケーション支援システムの構築
遠隔地点間の討論支援システム(図1)を、ATM回線を利用して、つくばの我々のグループと慶応大学、および新潟国際情報大学間で構成した。ATMという大容量・高速回線を利用して等身大の画像を見ながら、直接対面で議論を行っているのと同等の議論が実現できる環境の構築を目指した。メディアを使った議論では、我々が言うところの「メディア不協和感」が起こり、議論に熱中できないという問題が現実には生じる。この「メディア不協和感」を説明する認知理論仮説をたて、それを克服するようなシステムとして、我々のヒューマンコミュニケーション支援システムを設計した。
実際に我々が研究討論に使い、使うことにより評価を行う予定である。写真1は、使用状況をデモとして構成したものである。研究を開始して1年目の現状では、全体システムの構成に必要な各サブシステムの開発に追われている。研究討論システム(雷鳥システム:写真1)、ATMの利用技術、大容量画像データの圧縮・伝送ボードの開発(写真2)等の開発を行った。
(2)ヒューマンコミュニケーションの理論
ヒューマンコミュニケーション支援システムの構成指針を得、またその評価に役立てる。
コミュニケーションに熱中した、あるいはのめり込んだ状況を「コミュニケーションの楽しさ」となずけ、このような状態を作り出すのに必要な要素を主に認知科学的立場から検討している。現在、検討している作業仮説として、等身大コミュニケーション仮説、コミュニケーション開始時の弱相互作用仮説、コミュニケーションにおける社会的関係の影響仮説、受信者の能動性仮説等がある。
我々の関心は、このような仮説を最終的には定量的に明らかにしたいと思っており、記憶と「コミュニケーションの楽しさ」を関連づける試み等を行っている。
特に我々は、受信者の能動性を実現することがコミュニケーション支援システムの実現には不可欠と感じている。見たいときに見たい物が主体的に見れるという安心感があるだけで、「コミュニケーションの楽しさ」の重要な構成要素になる。今までの、コミュニケーション支援システムは、送信者の主導の下に全てが制御されている。雷鳥システムは、逆に受信者の能動性を実現するシステムとして設計されており、また、実際に使うことによりこの仮説を確かめる計画である。
我々の研究アプローチや研究方針は、現在主流のヒューマンコミュニケーション支援やヒューマンインタフェースの研究とはかなり異なったものになっている。現在のヒューマンコミュニケーション支援研究は、余りにも技術主導になりすぎ、我々の重視するヒューマンコミュニケーションの理論の確立がおろそかにされている。幸い我々のグループでは、コミュニケーション研究に対する発想の転換を提言する山本吉伸を中心とした、外部を巻き込んだ研究グループ作りが進展している。今後、ヒューマンコミュニケーションの理論が確立していくことを楽しみにしている。

図1 遠隔地間研究討論システムの概念構成図

写真1 遠隔地間研究討論システム(雷鳥)

写真2 システム構成のために開発中の画像圧縮・転送ボード