![]() |
|
硬組織グループ

■目的
骨のミネラル化の微細メカニズムや骨形成に及ぼすメカニカルストレスの影響及びハイドロキシアパタイトの物理的性質とその生体組織に対する応答に焦点を当てて研究を進めている。
1)生物物理、生化学的手法による培養骨芽細胞、破骨細胞によるバイオミネラリゼーションの解明
2)培養細胞におけるシグナル伝達系の解析を通してのメカニカルストレスの骨形成に及ぼす影響の解明
3)ハイドロキシアパタイト単結晶の曲げ強度の測定及びハイドロキシアパタイトの結晶成長メカニズムの解明
■成果
1)コラーゲンIやオステオポンチン等骨蛋白質の役割を分子レベルで解明するために、骨蛋白質と結合する膜蛋白質であるインテグリンの結合サイトを合成し、その結合のメカニズムに関して調べた。また、インテグリンを介した骨芽細胞の接着機構を調べたところ、骨芽細胞はコラーゲンIよりオステオポンチンを強く認識することが分かり、骨芽細胞の分化にオステオポンチンが強く関わっていることが示唆された。
2)培養骨芽細胞や血管内皮細胞をマイクロマニピュレータに装着したマイクロピペットで押すことにより細胞内カルシウムイオン濃度の一過的変化が観察された。これはメカニカルストレスをカルシウムイオン等のセカンドメッセンジャーに伝達するメカニズムが存在していることを示唆しているものと考えられる。
3)バイオミネラリゼーション
水酸アパタイト結晶(Ca10(PO4)6(OH)2)は生体の歯や骨の主要構成成分である。我々は、はじめてアパタイト結晶の成長過程のその場観察に成功した。その結果、驚くべきことに、水酸アパタイトは右手系と左手系が存在する直径0.8nmのCa9(PO4)6クラスターを成長単位として成長するらしいという証拠を得た。そこで、結晶成長実験に用いた擬似体液中に本当に0.8nmのCa9(PO4)6クラスターが存在しているのかどうかを、強力な光散乱法で調べた。その結果、擬似体液中に存在する粒子で、40nm以下の粒子は、0.7〜1.0nmと0.4〜0.6nmの2種類であった。このうち、後者は擬似体液の緩衝剤であるトリスアミノメタン分子であることがわかった。前者の粒子は、擬似体液からカルシウムとリンを除くと消減し、またpHを3まで下げても消減した。したがって、粒径0.7〜1.0nmの粒子はカルシウムとリンから成る、クラスターである。したがって、本光散乱実験で検出された0.7〜10nmの粒子はCa9(PO4)6クラスターであると考えられる。

図1 骨のリモデリングのメカニズム

図2 カルシウム蛍光色素で染めたウシ血管内皮細胞の蛍光像とマイクロピペットの透過像

図3 ウシ血管内皮細胞を押すことによる細胞内カルシウムイオン濃度の変化
(上図:細胞内のカルシウムイオン濃度変化の伝播)
(下図:固定したポイントにおけるカルシウムイオン濃度変化)

図4 水酸アパタイト(HAP)と炭酸水酸アパタイト(CHAP)結晶の太さと、3点曲げ強度の関係