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理論グループ

原子・分子プロセス理論技術等

寺倉 清之


宇田  毅


浜田 典明


■目的

原子スケ−ルで物質を制御し,望みの機能を持つ材料を創り出すことを究極の目的とし,その過程での原子・分子の振る舞いおよび機能発現のミクロな機構を理解をするための理論的研究を行う。

i)第一原理電子状態計算に基づき,原子集団,分子集団の安定構造を理論的に決定し,それらの示す種々の電子物性(伝導性,磁性,光学的性質など)を明らかにする。

ii)分子動力学シミュレ−ションやモンテカルロシミュレ−ションによって,結晶成長,化学反応などの動的現象における個々の原子・分子の振る舞いを理解する。

iii)複雑な系に対して理論計算を可能とするように,計算手法の改良,開発を行う。

■成果

理論グループは、計算手法の開発および超並列計算への挑戦を共通の課題としつつ、扱う物質群および現象によって分けられた三つのサブグループから構成されている。三つのサブグループは互いに重なりが大きく、研究活動は全体として有機的に協力して行われる。

A.半導体・表面サブグループ

バルクを含む半導体一般、および様々の固体表面で起こる動的原子過程、多様な物性の変化を解明することを目指す。7年度には以下の課題について大規模シミュレーションを行った。

1.Si(001)表面の酸化過程:これは最新の半導体技術における重要な問題である。いくつかの反応経路について、スピン分極を考慮した計算により、酸素分子が化学吸着するのに必要な活性化エネルギーを決定した。

2.Si(001)表面でのホモエピタキシャル成長:テラス上でのホモエピタキシャル成長の基本プロセスを明らかにするために、Si原子吸着の初期過程での安定構造、表面上での拡散過程、活性化エネルギーなどを第一原理の電子状態計算により求めた。

3.Si(001)表面のC型欠陥構造の解明:Si(001)表面のSTM像から、A, B, C三つの型の欠陥構造があることが判る。A型およびB型の欠陥構造は知られているが、C型の具体的構造は判っていない。一方、C型欠陥はSi(001)表面の酸化初期過程できわめて重要な役割を果たしている。C型欠陥構造の全く新しい構造モデルを提案し、第一原理計算からその妥当性を検討した。

4.水素化シリコン・クラスタ(Si6Hx)の構造:シリコン・クラスタの安定構造は水素化にともない密構造(x<7)から疎な環構造(x<7)に変化することを明らかにした。

5.COおよびN2の遷移金属表面への吸着:COおよびN2分子の遷移金属表面への吸着、それにともなう解離の過程を調べた。

6.溶融Siでのスピン分極:Si-Siの結合が生成されたり、切断されたりする際にスピン分極が生じ、それが動的性質に影響を与えることを示した。

B.遷移金属化合物サブグループ

遷移金属を含む化合物における電子状態を理解し、新しい機能を持った物質の開発に寄与することを目的とする。

ペロブスカイト型遷移金属酸化物の電子状態の解明:十倉グループで実験的研究が進んでいるペロブスカイト型の酸化物LaMO3(M=Ti, V, …, Ni, Cu)の電子状態を系統的に計算し、結晶構造、磁性、導電性などの基本物性の間の関係を電子状態から明らかにした。強相関電子系と考えられるこれらの物質の電子状態が、結晶構造や磁気構造などの基底状態はもとより、光電子分光などによって観測される一電子励起スペクトルにおいても、局所密度近似でかなりよく記述できることが判明した。この系には、軌道整列という重要な概念があり、それと磁気構造が密接な関係がある(図を参照)。これらの点において、局所密度近似を越えて、一般化勾配近似、LDA+U法などさらに進んだ近似法を採用すると、実験との一致はさらに改善されることが明らかになった。

C.エキゾティック物質サブグループ

1.導電性有機物の電子状態の解明:DCNQI-(Cu, Ag, Li)に代表される有機固体は、固体物理学でおよそ興味が持たれる現象のほとんど全てを引き起こすユニークな物質群を形成し、ここ十年程の間に実験的研究が飛躍的に進歩した。一方、その複雑な結晶構造のために、第一原理計算が十分な精度で行われたことはなかった。ここでは、おおきな計算機システムを背景に、計算プログラムの開発を行い、このような複雑な有機固体の第一原理計算を可能にした。Cu, AgおよびLiの原子置換の効果などについて信頼できる結果が得られており、この分野での新しい発展に寄与しつつある。

2.オリゴシランの光学的性質:オリゴマーの特徴は、分子鎖の長さを調節することによって、性質をかなり変化させることができる点にある。例えば、吸収される光の波長を制御できる。主鎖の長さが2から16までのオリゴシランの電子状態を計算し、それをもとにして十倉グループで測定された光学的性質を解析した。

LaMnO3での軌道整列。影のついた軌道は電子で占有されており、点線で示された軌道は空いている。エネルギー・ダイアグラムも下に示されている。この軌道整列が、この物質の反強磁性的磁気構造の安定化に重要な役割を果たしていることを示した。