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金山グループ

空間内原子集団観察操作技術
金山 敏彦


■目的

ナノメータ(nm=10-7cm)という寸法で代表される原子のスケールで精度の高い構造形成を行うには、これまでにない新しい方法が必要である。我々は、図1のように所定の原子配列を持つ部品を用意し、その集合反応を制御しながら進行させる方法を探ろうと考えている。ミクロな部品がうまくできていれば、適当な順序で部品を供給していくだけで、部品相互に働く力の作用で目的の構造がひとりでに−自己組織的に組み上がることが期待できる。

図1 原子集団の操作に基づくナノメータ構造の形成

はじめに所定の構造を持つ原子集団を作製し、これを構造形成の部品にする。ナノメータ程度の大きさの原子集団を適切な方法で作製すると、原子組成に応じて一定の構造をとることが期待できる。次に、その物性を利用して、自己組織的な構造形成を行う。例えば、図のように2つの原子集団を結合させた際にも、エネルギー的に安定な特定の構造をとるだろう。また、反応性が構造により変化するのを利用すると、特定の部分のみを選択的に励起したり、ガス分子と反応させることも可能だろう。このようにして、原子集団の反応や集合体の形成を制御しながら、最終的に所望の構造を作製することを意図している。

■成果

1.クラスターイオンの質量選択成長

イオンの捕獲に用いている交流4重極の一部を切断することで、4重極の外部に捕獲した広い質量範囲のイオンから、特定の質量以上のイオンを選択的に4重極の内部を経由して取り出せるように改良した。この装置を用いて、Si5H10+やSi6H12+などの水素化シリコンクラスターイオンが選択的に成長できることを確認した。

2.ナノ構造の自己組織的エッチング

SF6ガスを用いる電子サイクロトロン共鳴マイクロ波プラズマ(ECR)エッチングで、試料温度を-130℃に冷却するなど、エッチング条件を最適化することで、Siに直径約10nmの円柱を加工できることを見いだした。この自己組織的な構造形成は、エッチング反応生成物がSiの表面に部分的に凝集してエッチングマスクとなることに基づく。また、表面に付着させたPMMA(poly-methyl-methacrylate)分子や金属クラスターが、上記の構造形成の凝集核となることを見い出した。

3.電子ビームナノリソグラフィー

C60の蒸着膜は電子線照射で重合反応を生じ、ドライエッチング耐性に優れたレジストとして働くことを見い出した。これを用いて、直径20nm程度のSi円柱を加工した。

4.Si表面からのクラスターの熱脱離

Siの加熱によりSi6までのクラスターの昇華を確認した。蒸気圧の温度依存性はそれぞれのクラスターの形成エネルギーに一致し、これから1000℃程度に加熱されたSi表面上ではクラスターの熱的な形成が頻繁に生じているとの結論を得た。

Si6H12+クラスターイオンの質量選択成長の結果。4重極の内部を通過したSi6H12+イオンの数を電子線照射からの時間に対してプロットしてある。fは4重極に印加した交流の周波数、電子線照射の継続時間は100 msである。

自己組織的エッチングで作製したSi柱の透過電子顕微鏡による格子像。作製した構造が実際に単結晶Siで構成されていることが分かる。


35nm厚のC60蒸着膜に電子線リソグラフィーで形成した20nmパターンの走査電子顕微鏡写真。