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田中グループ
人工表面・界面の形成と計測制御
田中 一宜
このグループは、萌芽的技術分野の探索を目的としている。第1期の6年間においては、(1)半導体ナノ構造形成と欠陥構造解析、(2)磁性体超構造・新磁性体探索、(3)固液界面のその場計測と新しい電極触媒の探索、という3つの異なるシステムを対象に、それらの構造形成過程や物性を原子分子レベルで動的に追求し、新しい物質構造や機能の創出につなげていくことを目標にしている。研究の発展の度合いを考慮しつつ、新グループの形成あるいは他グループとの合体等、離合集散を柔軟に実行していく。
グループとしての共通理念は、物質科学、物質設計という視点でものを考えるということである。必要とする物性を発現し得る新しい物質構造をどう予測するのか、という物質科学の最終目標を見据えつつ、構造形成プロセス、特に表面・界面プロセスの原子分子レベルでの実験的・理論的解明と精緻な制御を通して、自然界に存在しない物質や機能を創出したいと考えている。
■成果
1)半導体ナノ構造形成と局所構造解析
グラファイト上に5nmサイズの微結晶シリコンを形成することに成功し(Fig.1)、STM(走査型トンネル顕微鏡)およびラマン散乱測定にもとづいて核形成モデルを提案した。アモルファスシリコン(a - Si : H) 中の低温光誘起ESR(電子スピン共鳴)信号をパルス ESR 法により詳細に解析し、その起原 (g = 2.004) がシリコン弱結合に捕獲された電子であることをつきとめた(Fig.2)。また、a - Si : H 中の光で生成される欠陥 (g = 2.005) は酸素や炭素と直接結合していないということが、それぞれの同位体を使った実験から、初めて証明された。パルス ESR 法の1つ ESEEM(電子スピンエコー裾変調)法により、水素原子をプローブにして熔融石英 (α-SiO2) 中の微小空洞のサイズを決定した。
セレンの2量体構造が、カンクリナイト単結晶中の細孔の中で実現されていることが EXAFS(連続X線吸収微細構造)で明らかになった。
2)磁性体超構造/新磁性体の探索
GaAs 基板上に、MnSb および MnGa 強磁性体薄膜をエピタキシャル成長させることに成功し、その基礎的な磁気光学特性を測定した。多層膜形成と光誘起強磁性の探索が次のステップとなる。
金 (111) 面にコバルトの2原子層の高さのエピタキシャルドット配列を形成し、ドットサイズ、ドット形状と Kerr 回転角などの磁気光学特性の関係を理論と実験の両面から詳細に調べた(Fig.3)。
3)固液界面のその場計測と新触媒電極の探索
表面プラズモン・ポラリトン (SPP) を励起するため全反射減衰 (ATR) 法を導入した結果、種々の金属表面の吸着分子からの微弱なラマン信号を数100倍増強することに成功した。理論的な検討も行ない、実験結果とよく一致した。

図1 異なる膜厚の微結晶シリコン膜表面のSTM像(定電流モード)。試料はPECVD法によりグラファイト基板上(基板温度300℃)に作製された。(b)〜(d)に関しては、ラマン散乱分光の測定により、微結晶の形成を確認している。

図2 パルスESRを用い実験的に分離したa-Si;HのLESR(光誘起ESR)のスペクトル。網かけ部分は29Siによる超微細構造

図3 コバルトドット配列の磁気光学効果。蒸着量を変えてドットの直径を変化すると、その変化が2.5eVの負のピークの大きさに影響することを見いだした。