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十倉グループ
新物質・物性探索による電子・原子過程制御観察技術への応用

十倉 好紀
十倉グループは、新規電子物性材料の開発とアトムテクノロジーへの応用を目指した研究を行っている。当面の具体的な対象は、遷移金属酸化物、有機分子システムなど、「強い電子相関効果」を有する物質系の開発と、それに関連したデバイス物理である。
強い電子相関効果とは、強いクーロン反発力のために2個のキャリヤー電子が同一原子サイト上を占めることができないような効果をさす。原子サイト数 (N) に対して、電子数が同じ個数 (Ne=N) あれば、電子は各サイトにちょうど1個ずつ収容されて絶縁体 (Mott絶縁体) となる。これはバンド描像が、金属状態を予言するのと対照的である。しかし、電子数を減らして (Ne<N) 穴 (ホール) をあけると、電子またはホールの運動によって、系はかろうじて金属状態 (強相関金属) となる。更にキャリヤードーピングを進めると、ありきたりの金属 (フェルミ流体) となる。本プロジェクトで、集中的な探求を行うのは、強相関金属状態の新しい電子物性発現の可能性についてである。このような強相関系で絶縁体と金属の境界にある物質群は、理論的には予測し難い多くの興味ある物性・機能があると期待される。高温超伝導はまさに、その一例である。現実には、上に述べた単純な状況に加えて、各原子サイトには、局在スピン (巨視的磁性のもと) がいたり、特定の不純物があって、これらが、強相関電子系と強い結合をするために、多彩な電気的、磁気的、光学的複合物性および機能が発現する可能性が大きい。
このような「強相関電子材料」は、21世紀での物質科学の新しい展開を考える上で、不可欠なキーワードとなるだろう。
■成果
強い電子相関効果に起因する特異な電子状態を利用した新物質の創成、新物性の開拓を行い、アトムテクノロジーへの応用を目指している。本年度、対象としたのはスピン_電荷_格子結合系電子材料−(1)ペロブスカイト型酸化物(2)有機分子システム―である。
(1)伝導電子濃度を精密に制御したペロブスカイト型マンガン酸化物単結晶の作製により(図1)、電荷整列に起因する1次相転移現象を発見した。この電荷整列状態が磁場によって融解することを見いだし、その物性を磁場_温度平面での電子相図によって明らかにした。
さらに1電子バンド幅を制御した(Nd, Sm)1/2Sr1/2MnO3単結晶において、格子と強く結合した巨大磁気抵抗効果が比較的低磁場で観測された。これは磁場によって誘起される絶縁体相から金属相への1次相転移と見なすことができる。図2に他の典型的な磁気抵抗材料との比較を示す。
層状ペロブスカイト構造を持つマンガン酸化物単結晶の作製に成功し、次元性の制御により、増強された巨大磁気抵抗効果の発現がみられた。
パルスレーザー蒸着法により(図3)、MRヘッドなどのデバイス応用に向けてマンガン酸化物薄膜のエピタキシャル成長に成功した。
(2)有機分子システムを用いた電荷_スピン複合系の構築を目指して、スピンを有する遷移金属イオンを含む電導性有機ラジカル塩を作製し構造・物性評価をすすめている。特に、ハロゲノ金属酸塩である FeCl4_ を有する錯体の結晶において、Fe3+のスピン間に伝導電子が介在した磁気的相互作用が観測された。

図1 ペロブスカイト型マンガン酸化物結晶(Nd0.55Sr0.45MnO3)

図2 典型的な磁気抵抗材料の特性比較

図3 パルスレーザー蒸着装置
