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市川グループ

ビーム技術利用原子レベル構造計測・制御・形成技術

市川 昌和


■目的

電子・光・イオン・物質ビーム及び探針に関する諸技術を利用して、表面・界面における原子・分子の吸着・拡散・反応過程などを制御する技術を開発し、この技術を用いて原子/ナノメータレベル構造形成の基本技術を確立することを目的とする。

ビームの特性の中で、細く絞れる細束性、波動性と運動/内部エネルギーを変化できるエネルギー制御性を利用し、成長とエッチングとドーピングを制御する技術に重点化して研究開発を推進する。表面・界面の原子/ナノメータレベルの構造や組成のその場計測を、走査干渉電子顕微鏡(電子線ホログラフィーの一種)と走査トンネル顕微鏡(STM)を組み合わせることにより行なう。さらに計測に使用するプローブを原子/ナノメータレベルの構造形成にも利用する。細束電子ビームや走査干渉電子顕微鏡で形成する電子線の干渉縞の照射あるいはSTM探針による電圧印加によって、局所的な表面反応を誘起する。これにより、反応のきっかけを与えたり、試料表面に他と性質が異なる異質的な領域を形成する。さらに運動 /内部エネルギーを制御した物質ビームを供給し、この異質的な領域に物質の成長やエッチングを選択的に誘起することにより、自己組織的に原子/ナノメータレベルの構造形成を行なう。

■成果

1.走査電子顕微鏡と走査トンネル顕微鏡の複合装置である原子操作顕微鏡を用いて、シリコン表面の酸化、及びGe薄膜成長のナノスケール制御の研究を行った。酸化に関しては電子線を照射した領域から酸化膜が試料加熱時に選択的に脱離すること、Ge薄膜成長に関してはGa脱離領域でGeのクラスタが選択的に成長すること、等のナノスケール構造形成技術開発に有用な現象を見い出した(図1)。

2.原子レベルドーピング技術の一環として、高温STMによりGa終端化Si(111)表面の原子レベルその場観察を継続した。高温に保持したGa終端化表面上でSTM探針により一部のGa原子を除去することをきっかけにして、Ga原子が表面から熱脱離し、原子レベルで正確なストライプ状の清浄シリコン表面が形成される自己組織化現象を見い出した。また、Ga終端化表面は酸化に対して不活性であることも確認した。これにより、ナノスケールの原子層マスク技術実現の見通しを得た(図2)。

3.極微構造エッチング装置を完成し、シリコン表面のイオン照射時のエッチング過程のその場観察を行った。試料温度によりエッチング様式が変化すること、電子線刺激カーボン付着によりエッチング過程での原子ステップの動きを制御できる、等のエッチングによるナノスケール構造形成技術開発に有用な現象を見い出した(図3)。

4.極高真空評価装置を利用したコンダクタンス変調法を用いて、10-12 Paレベルの極高真空領域のガス流量を定量的に計測できる方法を開発した。

図1 電子線励起によるSi(111)上のSiO2膜の選択的熱脱離


図2 STM探針励起による自己組織化


図3 ArイオンによるSi(111)表面のエッチング過程